その他 アダド:メソポタミアの星と天気
アダドは、古代メソポタミアで深く崇拝された神であり、天候や天体の運行を司る存在として知られていました。人々はアダドを、恵みの雨をもたらす者としてだけでなく、嵐や洪水といった自然の脅威をもたらす力を持つ神としても認識していました。メソポタミア文明は、チグリス川とユーフラティス川という二つの大河の恩恵を受けて発展しましたが、同時に川の氾濫という脅威にも常に晒されていました。そのため、人々にとって雨は生命の源であると同時に、時に破壊をもたらす両義的な存在であり、アダドはまさにその自然の恵みと脅威を体現する存在だったのです。メソポタミアの人々は、農耕生活を送る上で、気象現象の予測が不可欠でした。そこで、彼らは天体の動きを観察し、気象との関連性を見出そうとしました。これがメソポタミア占星術の始まりであり、アダドはその中心的存在となりました。人々は星々の位置や動きからアダドの意志を読み取り、雨期や乾期を予測し、種まきや収穫の時期を決定しました。また、建物の建築時期や旅行の計画なども、アダドの託宣に基づいて決められました。現代の天気予報のように、アダドの託宣は人々の生活の指針となっていたのです。さらに、アダドは王の吉凶を占う際にも重要な役割を果たしていました。王は国の代表であり、その運命は国家の命運に直結していました。そのため、王の即位や重要な政策決定の際には、アダドの神意を伺う儀式が執り行われました。戦の勝敗や国の繁栄もアダドの力に左右されると考えられていたため、王はアダドへの祈りを欠かさず、神殿を建立して崇拝しました。このように、アダドは国家の守護神として、人々の生活のあらゆる側面に深く関わっていたのです。
