天文歴 神秘の時間単位「ガーティ」
遠い昔、インドの人々は、空に輝く星々の動きや、太陽の昇り沈みに合わせて日々の暮らしを営んでいました。時の流れを正確に捉えることは、農耕や祭祀を行う上で欠かせないものでした。そんな時代に用いられていた時間単位の一つに、「ガーティ」というものがあります。「ガーティ」という言葉は、もともとサンスクリット語で「壺」を意味します。現代の私たちには聞き慣れない言葉ですが、その由来には、古代の人々の知恵が隠されています。当時、時間を計る道具として使われていたのが「水時計」です。水時計とは、文字通り水を使って時間を計る装置で、一定の大きさの壺に水を注ぎ込み、水が満杯になるまでの時間、あるいは壺から水が全て流れ出るまでの時間を一つの単位としていました。これが「ガーティ」の起源です。水時計は、現代の時計のように秒や分といった細かい単位で時間を刻むことはできませんでしたが、人々の生活リズムや、天体の運行を観察するには十分な精度を持っていました。一日は昼と夜を合わせて60ガーティで表され、これは現代の時間の単位に換算すると、およそ24分に相当します。日の出から日の入りまでを30ガーティ、日の入りから日の出までを30ガーティとして、一日の流れを捉えていたのです。また、インドの伝統的な占星術であるヴェーダ占星術においても、ガーティは重要な役割を果たしています。惑星の運行や、個人の運勢を占う際に、ガーティを単位として用いることで、より詳細な分析を行うことができるとされています。「ガーティ」という言葉とその背後にある水時計の存在は、古代インドの人々が自然のリズムと調和しながら、時の流れを捉えていたことを示す貴重な遺産と言えるでしょう。
