天文学 彗星:宇宙の放浪者
夜空に尾を引く姿を見せる彗星。その呼び名は、ギリシャ語の「kometes(長い髪)」という言葉に由来します。昔の人は、突然夜空に現れるこの星を、長い尾をなびかせる不思議な存在だと考えていました。まるで夜空に流れる髪の毛のように見えたのでしょう。その見た目から、世界各地で様々な言い伝えや伝説が生まれました。日本では、ほうき星という呼び名もよく知られています。現代の天文学では、彗星は氷や岩石、凍ったガスが集まってできた天体だと考えられています。太陽系が生まれた頃の物質が、そのまま凍りついた状態で残っていると考えられており、いわば太陽系誕生時のタイムカプセルのようなものです。そのため、彗星の成分を詳しく調べることで、太陽系がどのようにして生まれたのか、どのように変化してきたのか、といった謎を解き明かす重要な手がかりが得られると期待されています。彗星は太陽に近づくと、氷が溶けてガスやちりが放出されます。このガスやちりが太陽の光を受けて輝くことで、彗星特有の尾が作られます。尾には、ガスでできた尾と、ちりでできた尾の2種類があり、太陽風の影響を受けて、たなびくように伸びていきます。この尾の長さは、数百万キロメートルから数億キロメートルにも及ぶことがあります。まさに、夜空に描かれた壮大な絵画のようです。彗星は、その美しい姿と、太陽系誕生の秘密を握る存在として、今もなお人々を魅了し続けています。
